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「変革」は危険な玩具。軽率に扱うとケガをする。

会社を変革して成長するか、現状維持で衰退するか。さあ、どっち?

中小企業がこのような二者択一的、かつ二項対立的な問いに直面しているケースは、ままあります。売り上げが落ち込んでいたり、停滞感にモヤモヤと悩んで悲観的になったり。

そんなとき、経営者自らが音頭を取って、社員に対し「変革を急ぐぞ」と迫るケースもあるけど、コンサル企業から「変革しないと沈没する」とシビアな提言を受けているケースも多い。

でも、「変革」という言葉は、ときに危険なオモチャ。

不用意に振り回していると大ケガを負います。なぜかというと、変革というのは抜本的にガラリと変えてしまうことだから。根こそぎ変えようということだから。

つまり、企業の根幹が根腐れていると宣言しているようなものだからです。

虫歯が悪化して歯が根元まで腐っている。歯槽膿漏で歯グキまでバイ菌だらけで炎症がひどくて歯がグッラグラ。手の施しようがない。そんなときに抜歯するじゃないですか。

「御社、そんな最悪の状態なんですか?根っこからイカれているんですか?」と尋ねたくなります。

「変革」は異常値の変化要請だと思う。

人や会社が生きている限り、健全に成長しようと願えば、「変化」はつきもの。時は常に動いているから
会社が停まっていては、そりゃ置き去りになるか古ぼけます。というわけで、「変化」は平常値の健やかな挑戦です。

企業が5年も10年もまずまず堅調にやって来れたのは、いいところがあるからです。でなきゃ、とっくに潰れています。

だから多くの会社は、いいところをもう一度はっきりくっきり把握して、平常値の「長所進展」や「長所新展開」に基づき、事業計画をしっかり描き一歩一歩変化しながら着々と実行していけばよくなると思います。

でも、変化しよう、改良しようではなく、わざわざ異常値の「変革」というイカめしい言葉をあえて使うわけですから、「変革」の提言者には並並ならぬ、「猛り」のようなものを感じます。

「今はダメダメだ!ぶっ壊して創り変えるんだ!」と。でももし、その企業にとって必要なのは「変革」ではなく「変化や改良」だとしたら。

「変革」は、抜かなくてもいい歯を強引に抜歯してしまうとか、手術しなくてもいいのに強引に臓器を切除してしまうとかの暴挙に等しいと思う。

わざわざ破壊的な最悪解を選んでしまった、という自殺行為にもなりかねません。非常に危険であり、悲劇です。

変革をクチにする主体は、これまでをぶっ壊し捨て去る側の人間です。反対に変革の対象域にいる人間はぶっ壊され捨て去られる土壌に立つ人間。

僕は、変革創造はときに非常に重要だと思います。必要なシーンで、変化が鈍い人間がハジかれることも、営利企業であれば当たり前だと思います。

言いたいのは、「変革」が必要でもないのに、やたら変革を主張したがるコンサルとかは、破壊する側、捨て去る側の痺れるような快感に耽溺している可能性がないか、ということ。  

人間は、闘争が好きな乱暴な生き物だし、他者より上位に立ちたがる生き物です。人の頭越しに「さあ、壊してガラリと変革するんだあ」と、正義の確信を持って主張するときの優越感は、さぞや気持ちイイでしょう。

「変革か、さもなくば衰退か?」なあんて二項対立的な二者択一を迫られる岐路なんて、じつは中小企業にはそうそうないと思います。緩やかな改良改善で十分なことが多いのでは。

変革好きって、変態なんじゃないのか。AかBか、さあどっち?的な二項対立を問いかけるヤツは怪しいぞ。僕はそう斜めに身構えて、変革を選びそうな社長に再考や翻意を強くオススメすることもあります。

ところで、最近こういうタイプが人気政治家になったりするんですよねえ。あぶねーあぶねー。

PERSON

伊藤英紀

代表取締役 コピーライター歴30数年です。経営者で希に「コピーライターの仕事って、発想力とか感性が大事なんでしょ?」とおっしゃる方がいます。

「いえ、大事なのはむしろ、会社と社会と人と言葉、に関する知識ですかねえ」と面白くもなんともない答えを返します。確実にシラケます。

「まあ、着眼力と構想力も大事ですね」と補足したり、蛇足かなと思いつつ「言葉の技術と感覚、想像力や発見力も必要です」と追加したりしますが、盛り上がることはもちろんありません。

「コピーライターは発想力と感性だ」は、「料理人はセンスだ」とか「大工は1ミリへのこだわりが大事だ」といった一面的な類型化と似ていると感じられ、しっくり来ないのでつまらないだろうなと思いつつ、つまらない返答を繰り返してしまうのでした。

いい料理人はやはり調理法とか食材、料理の歴史文化の知識などもそれなりにあって、知識があるからちゃんとした技術が磨かれていくし、豊かな気持ちになれるお店づくりもできるんだと思うんですけどね。

その辺りはよくわかりません。が、はっきり言えるのは、受け答えがこのような行程を辿ると、ほとんどの経営者はコピーライターへの興味を失くす、ということです。