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デザインってなんだ?という講義をした件

残暑厳しい8月も終わろうとしています。皆さんは夏らしいこと、出来ましたか? 僕は…、皆無です!(デーン。先日知人に「色しろっ!」と言われました) しかし、こんなに晴れた日が多い夏らしい夏、近年珍しいのではないでしょうか。思うように外で遊んだり出来ず、何とももどかしいものですが、人間不思議なもので、大人はそれはそれで慣れてしまう。良いのか悪いのか…。

デザイナーってなんだ?ってなんだ?

閑話休題。去る7月某日、母校で講義する機会をいただきました。福岡は博多にある日本デザイナー学院 九州校、3年制の専門学校です(渋谷に同校の東京校があります)。同校の1〜3年のグラフィックデザイン専攻の学生を中心に40名ほどが聞いてくださいました。(冒頭の写真:ソーシャルディスタンスを充分に保って行いました)

デザイナーを志す彼ら彼女らが、いま何を感じているだろうか? 講義内容を考えるにあたって、学校の教務の方とも打合せをした上で、以下のように列挙してみました。

○デザインの仕事がどのように進むのか、全然分からない。
○クリエイターは激務と聞くが、大丈夫だろうか…。
○デザイナーの仕事ってAIに奪われるのでは?
○デザインを楽しいと感じられていない。
○課題をこなすのに精一杯で、毎日余裕がない。
○どんな仕事をしたいか、イメージが湧かない。
○あまり勉学に打ち込めていない。
○なんとなく、将来が不安だ。

テクノロジーの進化に代表されるような時代の変化による違いはあれど、根本のところは、僕がここで過ごした十数年前と大きくは変わっていない。そう思い至り、結果「デザイナーってなんだ?」という何ともスケールのデカそうな、聞く側としては「え、今日何の話きくの?」みたいなタイトルになってしまいました。

ちゃんとしとりんしゃーっ!

内容については、こんな感じの3章立てで話をしました。
(1)デザインの仕事について事例を交えて紹介
(2)仕事のやりがいについて「労働か自己実現か」といった切り口など、いくつかのポイントで
(3)「デザインと未来」として、ビジネスにおける今〜近未来のデザインに期待される役割

講義が終わると、何人かの学生が「ポートフォリオを見てほしい」と来てくれました。感心しました。というか、ちょっと驚きました。(心の声「ちゃんとしとりんしゃーっ!」→博多弁で「なんてしっかりしているんだ」の意。僕は当時も博多弁じゃなかったですが細かい事はさておき…)質と量が、僕らの時のそれよりだいぶレベルが高いのです。

自身の名刺を作り、Webサイトを作り、SNSでも発信したり、ポートフォリオを立派に製本していたり。それだけで無く「化粧品業界の仕事がある所に入りたいのだが、その視点でこのポートフォリオの内容をみると、どう感じますか?」と、目標とそれに向けた取り組みも具体的。学生時分の僕に「彼らを見習いなさい!」と言いたい…。もちろん、その熱量に負けないように、しっかり丁寧に見た上で、感じたことをフィードバックさせてもらいました。

違和感の正体。

ここで少し違和感を感じました。就活市場では売り手市場が続いているにもかかわらず、彼らは自身の売り込みにこんなにも躍起になっている。就職にはそんなに苦労しないのでは?とも思えるのに、どういう事だろう。

この背景について少し考察すると、2つほど理由がある気がしていて。
一つは物的要因。情報化社会×ガジェットの発達(ならびにアプリの高度化)で、デザイン学生も身近にかつ精度も高く創作が出来る環境になったこと。(僕世代がギリギリ知っている「写植の時代」とは、相当な隔世の感)
もう一つは、社会要因。僕たちが就活をしていたのは就職氷河期も終わり頃でしたが、とはいえまだ多少なり日本が成長していくイメージがありました。今の若い学生たちには、そうした牧歌的な空気感はあまり感じません。そこからくるであろう、漠然とした不安のようなものは、やはりあるのではと。(バブルや日本の成長期を知らない世代とも言われてますね)
他にも挙げればありそうですけど、この2つは代表的なものになると思います。

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教える側が、学ばされる。

講義は2時間半休憩も取らずぶっ通しで話したんですが(←生徒さんには申し訳ない)、不慣れかつ小心者の僕はこの講義の準備におそらくその3〜4倍の時間をかけたと思います。ただ、それでもやっぱりこういう機会はとってもありがたくて。

というのは、やはり自分自身が勉強になります。うまく伝わる方法を考える/伝えるために自分の中でもう一度掘り下げて考える/伝えたい事を整理し組み立てる/話し方や聞き手の反応から得られるフィードバック、等々。とっ散らかっていた思考が、講義の必要性にさらされ、整理・ブラッシュアップをせざるをえない状況に追い込まれる。で、それをやると自分の頭がクリアになる。もはやどっちが生徒なのか分からないくらい、講義する側にも学びをもたすのです。ありがたや、ありがたや〜。
しかし、これを通常運転でやられている教師や講師という生業の方々って、本当にスゴいなぁと、とりとめも無く思うのでした。

そういう訳で今回は講義してみての雑感を書いてみました。
まとまりに欠けるコラムですが、誰のせい?それはあれだ!夏のせい〜
(最後の一文、意味不明な方はこちらをご参照ください)

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