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表舞台に立つ、裏方。

林産業さんという会社があります。ポリエチレンシートの製造を軸に、医療・農業・食品・IT等、さまざまな分野へ製品を展開している同社。その入社案内のクリエイティブを、弊社のコピーライター外山・小池と共に担当させていただきました。今回は、この林産業さんの事例でアートディレクション(ビジュアル作り)の話を。

決定したタイトルメッセージは「Bravo Company」。お客様が満足してのBravo、社員同士が讃え合うBravo、共にその「Bravo」を創造していこう、と。
一見、商品の包装やハウス栽培等に使われるように「脇役」のイメージが強いポリエチレンですが、耐久性・耐熱性や衛生面など「素材としてそれでなければならない」という場合がほとんど。まさに名脇役。だから、その素晴らしさを肯定し、学生に訴えてきましょう。という事です。

「読んでもらう」は、あんがい高い最初のハードル。

交通広告(駅通路のポスターなど)だと、見られる時間は2秒と言います。この非常に短い「瞬間」に、印象づけやコミュニケーションを凝縮します。

ではパンフレットはどうか。ポスターよりは初見の滞在時間はあるかもしれません。でも、手渡しされるものだからと言って、ポスターで行うような見てもらうための工夫をサボってないか。学生は合同説明会などでこうしたパンフレットを沢山受け取る訳で、それ以外にもあらゆる情報で満腹気味な状態。「なんだこれは? 見てみよう」と思ってもらえるような、クリエイティブ面での創意工夫を施しておく事は、とても大事です。

大事なことなのでもう一度言います。手にとってもらった後、先ずは中身まで目を通してもらうこと。そこに広告物にとっての最初の大きなハードルがあります。せっかく予算をかけて作ったツールでも、創意工夫がなおざりで魅力に欠けるものでは読んでもらえない。それでは意味がありません。

「ブラボー」をどう調理するか。

「Bravo Company」。これをどうデザインに落とし込むか…悩ましいと思いました。一見するとキャッチーですが、あまり限定的でない文言でもあるため、ビジュアルを作るにはフィールドがまだ広すぎる。そんな中で、先ずはBravoという言葉の肯定感を、ビジュアルでさらに拡張させられないか、と考えてみました。

〜そこでちょっと、考えられる切り口を整理してみます〜
○地味っぽいけど、実は名脇役。だから楽しくPOPに!
○R&D部門もあり、作って世に出すという楽しみもある。
○生き生きと働くことができる環境がここにはある。

上記のポイントをもとに企画・ご提案したビジュアル案が以下です。(デザイナーのくせに絵が不得手なのはご容赦を…苦笑)

▼A案:ポリエチレンシートで「Bravo Company」を表現。林産業のクリエイティビティを感じさせる(=製品開発力やR&D部門)方向性。


▼B案:ポートレート案。大きなポリエチレンシートを持ってもらい、それ越しに表情を撮影する。カラフルなシート越しの社員さんたちを良い意味での引っかかりにして、共に働く楽しさを表現する案。

▼C案:「Bravo」は賞賛。賞賛といえば、セレモニー。だから、紙吹雪。…を、ポリエチレンシートでやってみよう。という案。各案の中でも「素材開発・製造という裏方に思われる仕事を肯定する」という所に振り切った案。

▼D案:ポリエチレンシートは伸縮性に富む素材なので、それを活かして、人の顔をプリントしたそれの口元を伸ばして思いっきり「Bravo」と言ってもらう、というアイデア。一見ファニーなアプローチですが、実はベースになっているのは、B案とA案の考え方(ポートレート+クリエイティビティ)。

企業のまだ見えていない魅力を、見える化するために。

結果、C案が採用になりました。

スタジオで一発撮りの写真。ポリエチレンシートでできた紙吹雪(=ポリ吹雪)など世にありませんので、制作チーム4人がかりで2時間ほど集中作業し、大量のポリ吹雪を作って撮影に臨みました。(ちなみに、その前に、堅めのフィルム的なもの〜柔らかい・薄いものなど、いろんなポリエチレンがある中で、どれが一番良い感じにひらひら舞うか、をさまざま検証。ベストだったのは、ごみ袋として使われるいわゆるポリ袋だったのでそれを採用)

ポリ吹雪は制作スタッフ4〜5人で、舞わせる係、風をあてる係を分担。舞わせてはホウキで集め…を何度も繰り返し撮影。モデルは、今回のカメラマンさんの娘さんがとてもかわいいのを知っていたので、頼んで出ていただきました。

このように「Bravo Company」を捉え直し、アートディレクションの観点で考えたのが、記事タイトルにもした「表舞台に立つ、裏方」。これがビジュアルのテーマです。

デザイナーって「面白いアイデアを」とか期待されがちですが、それがドラえもんみたいにパッとすぐ出てくる訳じゃない(笑)。が、 そうした時に、今回のように「捉え直し(切り口を整理)」してみると、光が見えてきたりします。そうして、コピーとビジュアルで、我々が知っているその企業の魅力を、伝わるものに(=見える化)する。

という訳で今回は「そのビジュアルになった経緯」の話って意外と目にしないなと思い、書いてみました。書きながら僕自身整理でき、以下の様に思い至りました。

言葉(コピー)で企業の魅力を伝えるのは大事ですしコミュニケーションとしてそれは前提。だが、デザイン(ビジュアル)にも、そこを担う部分が多分にある。そして時にはデザインがその主役を担っても良いと思う!と。(自分自身にも言い聞かせつつ)

…と言いつつ、ホントのところは、弊社ハッテンボールはコピーライター多めの会社ですので、じゃあ僕はデザイン寄りの記事を書こう!と思っただけなんですが。(笑)

PS:という訳で、お仕事やご相談、気軽にお声がけください!

 

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